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登録基準の該当性

世界文化遺産の評価基準6項目(6項目のうち一つ以上適合すること)

  1. 人間の創造的才能を表す傑作である。
  2. 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
  3. 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在である。
  4. 歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。
  5. あるひとつの文化を特徴づけるような伝統的居住形態若しは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。
  6. 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

該当する登録基準について

上記の評価基準のうち、該当するのは以下の項目である。

該当する登録基準 内容

III【文化的伝統や文明の存在を伝承する証拠で希有な存在】

現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明(の存在)を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。

 緑茶が中国から日本に伝えられて以降、京都府南部の山城地域では栽培・製法・加工において独自の工夫をこらし、緑茶を進化させてきた。当地域では、「抹茶」、「玉露」、「煎茶」といった多様な茶種の生産が行われており、それらの栽培法や加工法を反映した多様な茶園と茶生産に適合した施設を含む集落や地の利を活かした茶問屋の町並みをみることができる。

 本資産は、「緑茶生産の伝統と革新の歴史」を最も良く表しており、緑茶として独自の発展をとげた生産の歴史とそれに関わる多様な喫茶文化を物語る上で、他に例を見ない重要な遺産である。

IV【歴史上の重要な段階を物語る景観の類型】

歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観(の類型・典型)を代表する顕著な見本である。

 京都府南部の山城地域では、茶の湯に使用される「抹茶」、今日広く飲まれている「煎茶」、高級茶として世界的に知られる「玉露」の生産法が開発され、その技術は当地域から日本各地へ広がり、現代の日本における緑茶製法の主流となっている。

 本資産は、比較的小規模ながら、「抹茶」、「玉露」、「煎茶」の栽培に対応した覆下茶園や山なり開墾と呼ばれる独特な露地茶園などの茶園と茶生産に適合した施設を含む集落の集合であり、「緑茶生産の歴史上の重要な段階を物語る景観の類型」を最も良く表している。

V【ある文化を特徴づける土地利用形態の見本】

あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)

 

 京都府南部の山城地域では、栽培・製法・加工という緑茶生産技術の革新の歴史が繰り返され、その結果、茶の生産地は平地のみならず丘陵や傾斜地、河川敷にも広がった。

 本資産は、多様な土地を利用した茶園と茶生産に適合した施設を含む集落、水運利用など地の利を活かした茶問屋の町並みなど気候や地形・地質といった自然条件及び茶生産のイノベーションと販路拡大の歴史的展開に対応して形成された緑茶生産を特徴づける土地利用」を良く示している。

VI【人類の歴史上の顕著な普遍的意義を有する出来事や伝統、思想、信仰、芸術との関連】

顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

約500年前にはじまり京都を中心に展開された「茶の湯」は、今日、日本を代表する伝統文化として国際的にも広く知られ、「顕著な普遍的意義を有する伝統、思想、芸術」に該当する。茶の湯で飲用される「抹茶」は、16世紀後期から19世紀後期まで宇治茶師のみ生産が認められ、茶の湯を大成した千利休も宇治で生産された「抹茶」を第一とするなど、「茶の湯」を支え、「茶の湯」は宇治で生産された抹茶を支えるなど密接にかかわり合いながら発展してきた。今日でも、茶の湯に使用される「抹茶」のほとんどは京都府南部の山城地域で生産されている。

また、山城地域は、「煎茶」、「玉露」の中心的な生産地として「煎茶道」を支え続け、その一方、煎茶は、急須で茶を淹れるという「日常生活に根付いた喫茶文化」を発信し、一般に広めた結果、家庭や職場、そして日本国内においてどこでも飲むことができる「暮らしのなかの飲み物」となるなど、国民諸階層を対象とした喫茶文化の形成に大きく寄与している。