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南山城村

南山城村域の宇治茶の生産景観

南山城村域は木津川水運を背景に、幕末からの煎茶の輸出を契機として露地茶園を徐々に拡大してきた地域である。明治以降の各段階における宇治茶生産の拡大の歴史が、高い標高に展開する独特の風土の中で展開した土地利用と景観に刻まれている。

○田山

地理

名張川の右岸に位置し、緩やかな丘陵に多くの谷筋が入る地形に、山なりに開墾された緩勾配の茶園が点在する。高山ダムにより川霧が発生しやすい地域となっており、広範囲に茶園が広がっている

歴史

かつて梅林が広がる地域であったが、養蚕のための桑畑へと転じるとともに、幕末の煎茶輸出を契機として茶園が広がった。昭和44年に高山ダムが建設されると、川霧が広がるようになりさらに茶園が広がった。

景観

斜面の茶園と平地の水田の間に家屋が立ち並ぶ、伝統的な茶生産集落の生活景観が良く残る。集落から離れた山間には大規模な縦畝の茶園が広がる集団茶園が見られる。茶園は京都府選定文化的景観に選ばれている。

田山の集団茶園

○高尾

地理

名張川の左岸に位置する標高300mに達する丘陵上に開かれた茶生産集落である。名張川へと伸びる複数の支尾根の間はすり鉢状の地形となり、斜面に開かれた茶園の間に茶農家が点在する。

歴史

尾根に沿って家屋が点在する散村である。かつては名張川に近い標高の低い位置にも集落があったが、ダム建設に伴い多くが移転した。戦後に大規模な集団茶園が開拓された。

景観

支尾根の間のすり鉢状の急勾配の斜面に南山城特有の縦畝茶園が開かれ、その中に古い茶農家が点在する特徴的な景観を見せる。茶園のところどころに花崗岩の巨岩が露出する。茶園は京都府選定文化的景観に選ばれている。

高尾の茶園と家屋

○童仙房

地理

和束町と接する標高500mの山上に位置する高原地帯で、香りの良い上質な茶を産出する。緩やかにうねる丘陵に集落と茶園、水田が広がる。

歴史

明治2年より京都府の官営事業として開拓された集落で、水田、畑地、茶園が開墾された。標高を生かした茶生産が行われ、戦後にもさらに茶園が拡大された。

景観

山間の緩やかな丘陵地に水田と山なり茶園が対を成す素朴な景観が営まれている。南山城村の中でも縦畝ではなく横畝が優勢で、村内の茶生産の景観の多様性が伺える。

童仙房の町並み

○今山

地理

木津川右岸の標高150mほどの河岸段丘上の集落である。近隣の高山ダムや木津川により発生する川霧が茶の生育に適した気象を生んでいる。

歴史

昭和44年の高山ダムの造成により、高尾や田山より移住した農家によって開墾された。

景観

緩勾配の広い斜面に、畝長約200mに及ぶ、他に類を見ない広がりのある茶園景観をみせる。煎茶だけでなく碾茶生産もおこなっており、露地茶園に加えて覆下茶園も見られる。茶園は京都府選定文化的景観に選ばれている。

今山の茶園